Part2ドイツ編: 核ごみプロセス、海外ではどうなってる?~ドイツ・フィンランドの事例から~

Part1に続き、後半のPart2では、選定プロセスが進行中のドイツの事例をお話しいただきました。

※Part1は、こちらです!

ドイツで進行中の、新しい選定プロセスとは?

2011年の東日本大震災をきっかけに、脱原発を明言したドイツ。原発が過去のエネルギーになる中で、残されたゴミを誰とどう決めるのか、大きな枠組みが動き出しています。


これまでの処分場は、「地質的に北側、政治的に中央部」

ドイツの場合頭に入れておくべきなのは、南北問題があるということ。エネルギーを使うのは南で、創り出すのは北。なので、作ったエネルギーをどうやって南に送るかが問題となっています。処分場も、地質的に選択すると北になってしまいます。

モルスレーベンとアッセは低レベル放射性廃棄物の最終処分場。東西ドイツに分かれていたころ、それぞれ国境沿いに作られたため、結果的にすべて境界地につくられましたが、国境が消えた今、結果として真ん中に処分場が集積しているように見えます。

中でもゴアレーベンは、かつて高レベル放射性廃棄物処分場の唯一の候補地でした。でも、政権が緑の党と社民党になったり、キリスト教民主同盟に変わると、ゴアレーベンは処分場予定地になったり、白紙撤回になったりを繰り返します。3.11の当時は、ゴアレーベンは予定地だったのですが、ドイツが脱原発を決めたので地質探査はすべて中止となりました。

サイト選定法

メルケル首相は3.11の朝まで原発推進派だったのですが、すぐに原発を止める政策に転換しました。その後残った最大の問題が最終処分場で、そこでサイト選定法が2013年7月に制定されました。

この新しい法律では、まず立地選定の法律についての提案をするための委員会を、連邦議会内に設置することが定められています。その際、「ゴアレーベンの試掘調査は中止するが候補として残す」ことを決定しています。なぜかというと、すでにものすごい調査をしてあるため、最終処分に他の地域が選ばれた時にゴアレーベンとの比較結果を知りたがることが想定されたためです。

ちなみに、ドイツ人の感覚としてはこうした廃棄物問題は原則「発生者責任」。だから費用は事業者が負担することが、国民的な感覚だそうです。またドイツの場合、特別な財政措置は無く、他の公共施設と比べて特別なお金が与えられるという考えはありません。日本の電源三法交付金のようなな、おカネをじゃぶじゃぶ使うという事はしません。


2031年までにサイトを決めたい!委員会を設置するまでに1年半かかった理由とは

高レベル放射性廃棄物処分委員会は、主に環境団体からの批判もあり、すぐには進みませんでした。

委員会の構成

 構成(34名)

 委員長(2名)(議決権なし)

 科学者(8:議決権あり:地質2、法学2、物理2、化学1、土木工学1)

 社会グループ(8:議決権あり:環境団体2、宗教団体2、 経済団体2、労働代表2)

 連邦議会議員(8:議決権なし)

 連邦参議員議員(8:議決権なし:8つの州政府代表)

(議決権を有する委員のうち、2/3以上の多数決で決定)


「議論は全員で行うのですが、議員は議決権を持っていません。連邦参議院議員は州の代表です。科学者と社会グループなどが参加します。」

しかし市民の反応は冷たいもので…

「メルケル氏は脱原発を決定したけれど、今までの政策について謝罪をしておらず、反省してないじゃないか!」と批判!また、ゴアレーベンを候補地としていた事実や、議会主義(議会で決めてしまうこと)や、産業界の関係者が多いことなどを懸念し、未だに「見切り発車ではないか」という批判もあるとのこと。

そして環境団体は、ゴアレーベンが候補地に含まれているという理由で参加を拒否!

しかし、緑の党などが環境団体を説得し、BUNDの代表とドイツ環境基金の代表がメンバーに入り、ようやく2014年6月に第1回目の開催に至ります。

澤井さんも実際に、委員会を傍聴してきたとのことです。

「10時に開始して18時まで。ずーっと議論し続けます。ドイツ人ってすごいです…。

インターネット中継もあったけれど、国民的には、「時間が長すぎて相手にできない!」と批判が。資料もとんでもなく膨大でした。情報公開とは何かを、改めて考えさせられましたね。そんなこんなで委員会は、1年半続いたのですが、公開される委員会はいわば最上位にある儀式のような会議。この委員会の下部にある作業部会は非公開でした。」


委員会、その後

委員会の過程で住民から、「事業者は信頼がないので国が責任をもって行ったほうが良い」という意見があったことから、新たな機関として連邦放射性廃棄物機関(BGE)を設置しました。また、それを規制する機関として連邦放射性廃棄物安全庁(BfE)も設置。この4月から、ホームページが動き始めたばかりです。

出典:原子力資料情報室(http://www.cnic.jp/7130

「やはり地層処分が前提であり、ゴアレーベンも候補地からはずされてはいません。廃棄物の取り出し可能性を担保することや、3段階のサイト選定手続きのうち、1段階~2段階の候補を連邦法で決めてしまうこと、母岩の選定方法などが明記されました。

サイトの決定は、2031年を目指しているとのこと。

第2段階にて、多数を複数にまで絞る。第3段階でボーリング調査などで安全評価を行う。この段階で、ゴアレーベンと比較されると思います。

法律だから異議申し立てはできるとのことですが、国会で議決していくわけです。だからものすごい圧力があると思います。ドイツも何回も選定プロセスに失敗しているから…さすがに、”今度こそ絶対決めるぞ!”って感じだと思うのだけど。」

他に、選定の際の条件も明記してはあります。

 確実に隔離する

 100万年にわたり確実に防護する

 閉鎖後500年は取り出し可能性を担保しておく

 人の介入を要しない処分場設計・操業を行う

…等の、安全に関する要件を明記しています。


これがドイツのサイト選定プロセス!社会諮問委員会

ドイツのサイト選定プロセスも三段階あり、

「第1段階」:地上探査サイトの選定

「第2段階」:地下探査サイトの選定

「第3段階」:処分場サイトの提案・合意

となっています。

その各段階において、連邦レベル、広範な地域レベル、特定地域レベルで委員会や会議等を設置することが勧告されているのですが、特に特徴的なのが、連邦レベルで設置される「社会諮問委員会」です。

出典:原子力資料情報室(http://www.cnic.jp/7130


「連邦レベルの社会諮問委員会で人が決まっている。最終的には18名が選出されるのですが、今のところ9名が決まっている段階です。そのうち市民代表が3名、議会から選出された学者や識者が6名。」

「市民代表をどう決めるかというと、市民を電話で無作為抽出し、参加の意思があるかを確認して、120名募ります。そこから、ドイツ国内の5か所に集めて市民代表委員を選びます。年齢・性別などバランスよく。「この問題を若者抜きでは語れない」という趣旨から、大学生が1名加わっています。サイト選定作業は2031年まで議論する予定ですが、委員は3年が満期なので、委員はどんどん変わっていく想定になっています。」

「ドイツの選び方は、一つのやり方。具体的に上がってきたら反対運動はすごいだろうと思うけれど、どうなるかわかりません。原発もダメだけど、処分場にも、この手法に対しても、環境団体は反発しているのが現状です。」


環境先進国のイメージのあるドイツも、核ごみについてはかなりの試行錯誤をしている状況がうかがえます。

日本には、安定した地盤も、原子力政策に対する国民的合意形成も、ありません。そうした国で、あたかも地層処分が一番良い安全な方法のように国民に啓発し、理解させようとする今の国の方針が果たしてよいのかどうか、真剣に考えねばなりません。

核ごみプロセスをフェアに!

商業用原発が稼働してから60年の間に、約18,000トンの”使用済み核燃料”が排出されました。これまでの処分場誘致のプロセスは決して民主的なものとは言い難い結果です。そんな中、経産省は、2017年度中に高レベル放射性廃棄物の処分地に適した地域をマッピングして、公表する予定です。そこでA SEED JAPANでは、「公正なプロセス」とは何かを探るため、草の根のプロジェクトを立ち上げました。

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