NUMOアクションプランに対する意見「広報活動の凍結を」

原子力発電環境整備機構(NUMO)は2018年3月28日に「対話活動改革アクションプラン」を公表し、4月10日までに意見書の募集を行いました。

これに対し、A SEED JAPANでは下記の意見書を提出いたしました。


2018年4月10日

原子力発電環境整備機構 近藤 駿介 殿

対話活動改革アクションプランに対する意見

国際青年環境NGO A SEED JAPAN


当団体としては、以下2つの理由から、全国意見交換会および学生に向けた情報提供等、一切の広報活動を即座に凍結することを求めます。

(1)全量再処理、地層処分が前提の「対話活動」は国民をミスリードする危険性があるため

残念ながら、全量再処理、地層処分が前提の「対話活動」は国民をミスリードする危険性があるため、容認することは到底できません。

御機構は「現状と課題」の部分で「①知識量の差で議論に加われない参加者がいること、②議論が活性化しないこと」を挙げています。しかし御機構の抱えている本質的な課題は、参加と議論を促すことではありません。現状の原子力政策の下で広報活動を続ける限り、国民に誤った情報を伝え続けることになり、無意味どころか社会・将来世代に多大な負債を残すと考えます。

確かに2000年の最終処分法では、ガラス固化体を地層処分する旨が明記されています。しかし状況はその後変わっており、ガラス固化体を製造する根拠である再処理工場や高速増殖炉は将来的にも稼働が難しい状況です(高速増殖炉は廃炉が決定)。現状の核燃料サイクル計画はすでに破たんしています。御機構が想定している「ガラス固化体を六ヶ所村から搬出して地層処分する計画」は実態に即していません。一方で、福島第一原発や高速増殖炉もんじゅ、六ヶ所再処理工場には、廃棄の方法がまだわからない高レベルの放射性廃棄物が存在しています。実態に伴わない前提の中で議論を促すことは、建設的な議論を阻害するものではないでしょうか。現在の放射性廃棄物処分問題は「最終処分地選定」に問題が矮小化され、うわべだけの「対話」が行われていると言わざるを得ません。

御機構はリスクコミュニケーションや対話活動の技術的側面を注視し、あたかも「情報伝達と合意形成のスキルをあげれば地層処分問題は解決する」と考えているように推察します。しかし今必要なのは、公論形成に基づいたエネルギー政策の方向性を確立させること、すなわち全量再処理路線や原発温存の政策を見直す議論をすることだと考えます(公論=熟議を重ねて作られる世論)。また、各地の原発に溜め置かれた使用済み燃料の処分方法や再処理工場に溜められた放射性廃液の処理の困難さを国民が知ることです。これに関しては、経産省の命令を受け、またその役員・職員に多くの電力会社や原子力事業関連機関からの出向者・出身者を抱えている御機構が行う事は不可能です。

(2)組織への不信が払しょくされないため

11月14日に学生動員問題が発覚した後、11月30日に調査チーム設置が公表され、12月27日に調査チームからの提言書を受理しています。提言書の中には「再発防止策の徹底」についても言及されていました。しかしその後わずか1か月後の1月30日に、「対話型全国説明会」の試行的実施を公表しました。公表日は再発防止策の公表日と同じであり、開催がもともと決まっていたようにも見受けられます。対話型全国説明会の開催趣旨には「調査チームの提言書を反映して」と書いてあるにも関わらず、いわゆる「手作りの全国説明会」の必要性についてなどは提言書のどこにも言及がありません。一体提言書のどこを反映したのでしょうか。一方、動員問題に対する処分については、御機構の近藤駿介理事長及び藤洋作副理事長に「厳重注意及び月額報酬10%減額(2ヶ月)」、中村稔専務理事及び宮澤宏之理事に「厳重注意」処分をすることで片付けられました。しかし、本当に信頼を揺るがすものとして事件を重く受け止めているのであれば、このような一時的な処分ではなく、組織の体制を抜本的に変革することが、本来求められていることではないでしょうか。

さらにこの根本原因は、経済産業省が最終処分事業だけを切り離してその事業責任を御機構に押しつけ、拙速に立地選定の遂行を迫っていることがあると考えます。その結果、責任を負わされ早急な対応を求められた御機構の焦りが、委託先や再委託先、電力会社から出向してきた職員を、今回のような不適切な行為に駆り立てることになったのではないでしょうか。今後説明会等が直営になることで経産省からますます御機構に圧力が集中し、組織としても疲弊する、そのような事態を回避するための施策を講じる必要があると考えます。

※すでに御機構には2通の提言・抗議文(A SEED JAPANメンバーも執筆に協力)を提出させていただいております。そちらも併せてご参照ください。

①提言書「地層処分事業推進の前に、信頼の獲得と将来世代への 負担軽減のために徹底した検証と情報公開を ~NUMO意見交換会における「不適切動員」を受けて~」https://asjkakugomi.amebaownd.com/posts/3299900

②抗議声明「原子力事業・放射性廃棄物処分事業全般への真の「事実関係究明と再発防止に向けた対応」がないままの「対話型全国説明会」再開に抗議する」

https://asjkakugomi.amebaownd.com/posts/3299900


核ごみプロセスをフェアに!

商業用原発が稼働してから60年の間に、約18,000トンの”使用済み核燃料”が排出されました。これまでの処分場誘致のプロセスは決して民主的なものとは言い難い結果です。そんな中、経産省は、2017年度中に高レベル放射性廃棄物の処分地に適した地域をマッピングして、公表する予定です。そこでA SEED JAPANでは、「公正なプロセス」とは何かを探るため、草の根のプロジェクトを立ち上げました。

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