「核のゴミ」地層処分~安心・安全な「適地」はあるの?~ 立石雅昭氏(新潟大学名誉教授)

北海道豊富町で開催された、「ほろのべ核のゴミを考える全国交流会」の講演内容をまとめました。



0.はじめに

地質学者として有名な立石名誉教授。開口一番に触れたのは、原発の最大のリスクは地震だということ。核廃棄物においても大地の動きに関わるので一番大きな影響と考えていると仰いました。

「地震活動がいつまで続くのかは分からない。突如として震度7になるものもある。各地で大きな地震があり、地震活動期と言われている。しかしいつまで続くのかわからない。現在の科学技術のレベルで言っても、現在の地震活動期がいつまで続くのかはおそらく誰にも分らない。その間に今原子力発電所が引き続き再稼働しようとしている状況の中で、地震活動は続いている。

柏崎刈羽原子力発電所の震災時後に関しても、当初ここは活断層ではない、地震はないと言っていた。ところが、日本は起こった災害に対して、その教訓を導き出すこともなく原発を動かしている。そんな中で核のゴミをどうしたらよいのか、全貌の無いまま進んでいる。

どんどん核のゴミが増えていく。次世代に任せておいてはいけない。国民も真剣に考えねばならない。

そのような状況の中で、科学的特性マップをそれなりに期待していたのだが…まったく科学性がないことに、がっかりした。」

そのあと、いくつかポイントに分けて、この科学的特性マップの何が問題なのかを、まとめてお話しいただきました。


1.海岸線

沿岸20キロが好条件というが、海岸は、崖が続いているところが多い。反対に、砂地のところはとても浅い。海の深さを測らないと、実際には運送できる港ができるかどうかも分からない。


2.断層

特性マップでは、40キロより長い断層で地表に現れている部分だけを「好ましくない特性がある」黄色でマークしている。しかし実際には、ほとんどの断層が傾斜しているため、黄色のマーク以外の部分で直下型地震が起こるかもしれない。そのため、このマークの付け方は科学的ではない。

また、断層帯があるにも関わらず、地表に現れていないからといってマークされていない箇所もあり、信じられない。

稚内と豊富、幌延の周辺に位置するサロベツ断層帯は短いように見える。しかしこれは、原子力業界での定義(12~13万年の歴史から予測した結果)である。一般の地震予測をするときに、文科省の地震調査研究推進本部が出している調査結果を使う事があり、こちらでは数十万年を目安に測定されている。これに基づけば、サロベツ断層帯は44kmの長さがある。

最近地殻変動があったところは断層が傾いている場合、地下に断層がある場合がある。このサロベツ断層帯は東の方に傾斜して沈み込んでいるため、これが活動するとM6強~M7以上の地震になる可能性がある。これまで地震が起こってこなかったけれど今後起こりうる可能性のある地域(地震空白域と呼ばれています)として認識されている。

しかし今回のマップは、こうした調査結果を活かしていない。現代の科学技術でも不十分でもあるが、それすら活かしていないのが、今回の特性マップだと、言わざるを得ない。

3.火山

北海道の南西部は、太平洋プレートに北アメリカ大陸の下に太平洋プレートが潜り込んでいるため、ほとんど黄色(好ましくない特性がある地域)の円で塗りつぶされている。

しかし現在火山はない地域でも、将来起こりうる。昔火山でできた地形がある場所では、今後も火山がないとは言い切れない。

端的に言うと、火山は徐々に活動の場所を変えているため、50万年前には別のところで活動していた。火山活動は少なくとも100万年といった歴史を見た場合、次々に場所を変えながら噴火している。それを考慮するなら、この範囲は全部ダメだというのが当然の帰結。

したがって、「火山から15キロ」で済ませるというのは科学的ではない。


4.国民的合意をどう作るか―日本学術会議の回答と提言について

日本学術会議は二度にわたって提言を出したが、経産省は無視している。重要なことは、今のような社会的な合意の無い中で、核廃棄物の扱いを進めることはできないということ。数の力で押すというわけにはいかないのが核ごみ問題。しかし、国民的な合意を作る、ある意味では信頼関係をどう築いていくのかについて、方策の無いままであることを危惧している。

技術的な方策も国民的合意の方策も持っていない現在、学術会議の提示する以下の3つの柱が重要なポイント。

総量規制(原発のゴミの総量を決めること)
暫定管理(暫定的に乾式で地上保管をすること)
社会的合意(討論の場を設置して多段階合意形成の手続きを取っていくこと)

今の政府の進め方の下ではこうした提言は無視されている。特に国民的合意を求める方策が示されていない。恐らくパブコメをやっていくと思うが、これまでに幾度となく実施されてきたが全部無視された。活かしてくれたことがない。

でも諦めてはならない。政府のやり方に不満もあるがこんな重要な問題を。次の世代への責任として諦めるわけにはいかない。


5.これから大切な事は…

透明性・客観性・公平性

私は事業主体、国との間に第三者とする機関が客観的に評価できるようなシステムが必要だ。今の規制委員会でいいのかどうかも含め、検討が必要である。

地域の権利を守ること

それぞれの地域自治体に拒否権が保障されているのか。国策だからと言って進められてしまうことが否定できない。地域住民の権利をどうやって保障していくことができるのか。場合によっては住民投票も必要かもしれない。

いずれにしても、正しい情報公開と、住民の意思を反映、合意形成が大事だ。


科学的特性マップの公表用サイトはこちらです。

日本学術会議の回答と提言はこちらです。

こちらは2014年に発表された日本学術会議の回答。要旨だけでもぜひ読んでみてくださいね!

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核ごみプロセスをフェアに!

商業用原発が稼働してから60年の間に、約18,000トンの”使用済み核燃料”が排出されました。これまでの処分場誘致のプロセスは決して民主的なものとは言い難い結果です。そんな中、経産省は、2017年度中に高レベル放射性廃棄物の処分地に適した地域をマッピングして、公表する予定です。そこでA SEED JAPANでは、「公正なプロセス」とは何かを探るため、草の根のプロジェクトを立ち上げました。

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