Part1 核ごみ受入れを検討した地域のこれまでと、今

A SEED JAPAN核ごみプロセスをフェアに!プロジェクトの、西島香織です。

5/23(火)―この日、京橋のミーティングルームに16人が集まり、オープンミーティングを開催しました。

テーマは、「核のごみ」。

原発が稼働して60年余りが経ちますが、未だ処分場は決まっておらず、これまで発生した使用済み核燃料は、まだ正式稼働していない再処理工場に少しと、海外に少し、そして各地の原発サイト内に溜め置かれています。

そこで、原子力資料情報室(CNIC)共同代表の西尾漠(にしおばく)さんに、
「核ごみに反対してきた住民運動の歴史と、これまでのプロセスの欠陥について教えて下さい」とお願いし、お話しいただきました。


処分地選定プロセスが良いとか悪いとかという問題では、そもそもないんです。

「主催者には申し訳ないのだけど、プロセス云々の問題ではないんですよね。」

「公募」が行われる前から色々と処分場の場所を探そうという動きがありました。公募の前の段階では、電力業界中心・科学技術庁中心に行われました。前は経産省(当時は通産省)ではなく科学技術庁が原子力行政の中心であったためです。

1960年代から「場所選びをしていた」という記事がありますが、本当のところ、何をしていたかはわかりません。原子力産業界に対して「こういう場所があるからどうでしょうか」という話を持ち掛ける人たちがいて、働きかけを行っていました。でも候補地は決まりはしませんでした。というか、青森県六ヶ所村に核燃料サイクル基地ができることが決まって、処分場も六ヶ所だと、かなりの人が思い込んだようです。実際に、裏では決まっていたと証言する人がいます。

その後、公募が始まると、また、こそこそした動きが出てきます。表沙汰になると潰れるからこそこそとやっているのだけど、こそこそやると余計、ばれた時に潰れる…だいたいがそういうパターンでした。「こそこそ」といっても色んな人が動くのでばれてしまうのですね。

公募開始の後では、働きかけの相手は、首長・議会が多いと思います。漁協・農協の組合長とか地元有力者への働きかけもかなりあって、その中で誘致しようという話が出てくる。

働きかける方も、働きかけられる方も、処分場のことはどうでもよくて、お金の話だけ。お金目当てではなく誘致しようというところはありません。滋賀県の余呉町という町の助役さんに会った時にも、「誘致する気は全くない」と堂々と言っていました。「文献調査が終わって概要調査を行うときに『やめます』と言う、あるいはもう少し調査進めてからどこかで断ればよい」、と考えていたのでしょう。そういう考えのところしか、手を挙げなかったのではないかと思います。だから、処分地選定プロセスが良いとか悪いとかという問題では、そもそもないんです。


「有望地」=「受け入れに反対しない地域」?

現在では、処分実施主体のNUMO(原子力発電環境整備機構)が水面下で動いています。声をかけられそうなところに入っていく。やり方としては、例えば、これは新聞報道があってわかったんですが、新潟県関川村でNUMOは、勉強会の支援事業を行っています。一年間に200万円までの支援費が出る。自治体としての勉強会なら600万円です。関川村では、話が出てすぐに福島事故が起こったので中止になりました。NUMOは、一度はやめた勉強会支援事業を最近になって、また始めています。どういうところを支援しているかは公開していません。秘密です。

また、鉱山の跡地は地下が使えるので、研究に使ってきました。そこが処分場になるという事はないでしょうが、呼び水にはなるかもしれません。

地下の研究所は現在、北海道幌延町と岐阜県瑞浪市にあります。普通の条件で考えたら処分場になるところではなく、研究施設としてもいいところではありません。でも、一応それなりに調査してから、そこを選んでいます。だから国は「科学的有望地を示す」と言っているけれど、受け入れるところがあればそこが「有望」とみなされてしまうのではないかと懸念しています。幌延でも瑞浪でも地下を掘ると大量の水が出て、幌延では塩水だったりする場所が選ばれている。瑞浪だとちょっと港が遠いので処分地になることは難しいように思いますが、これまでの原発や関係施設の立地を振り返ってみれば、作る気になったら作ると思います。

地下研究所は、研究施設というよりPR施設としての性格が強いのではと思います。地元ではそれぞれ、条件は悪いけれど結局処分場になってしまうのではないかと危機感を持っています。幌延の場合は、深地層研究センターと言われていますけれど、最初の計画では貯蔵工学センターといって、高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵も計画に入っていました。反対が強かったために、研究だけにしたのです。

それでも、受け入れてしまうと次々と新しい計画が出てきていて、最初の話とずいぶん違ってしまっている。「科学的有望地」とか言っているけれど、地下研究所や原発や関連施設があるところとか、その近くとかというところが、恐らく進める側にとっての一番の「有望地」ではないかと推察できます。

青森県は、県として高レベル放射性廃棄物は受け入れないと言っていて、当時の科学技術庁長官から何度も確認書をもらっています。今も経産大臣とかが組閣で変わるたびに確認を取っているのです。でも当時確認書を取った当時の人たちが地元の新聞で、「県民が納得してくれるまで待つ。そういう時期が必ず来る」とか、「後世の知事を拘束するものではない」とかと言っています。六ヶ所村も科学的には決して「有望地」ではないのです。けれども、「作れるところが有望地」となりかねない。日本地質学会の研究委員会が良いと言っている所と、実際に選ばれる地域は違うんだろうなと、思います。


「選定プロセス」を問う前に話し合うべきことがある

現に六ヶ所村や東海村には高レベル放射性廃棄物のガラス固化体と固化前の廃液があります。六ヶ所村と各原発現地に使用済み燃料が貯まっています。原発の再稼働というのは、それをさらに増やすことです。選定プロセスがどうこうという前の段階の話を、みんなでしていった方がいいのではないかと思います。



KEY WORDS


地層処分/公募制

2000年に成立した「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」(最終処分法)に基づき、政府は、地下300m以深の安定した地層に処分(地層処分)する方針を固めました。

処分の実施主体である原子力発電環境整備機構(NUMO)が、処分地選定調査を受け入れて頂ける自治体を2002年から公募してきましたが、現在に至るまで処分地選定調査(文献調査)に着手できていない状況です。

(参考:経産省 http://www.meti.go.jp/press/2015/05/20150522003/20150522003.html


有望地(科学的有望地)

これまでの現在の処分地選定の進め方は、応募/申入れするときに、「なぜこの地域なのか?」の説明が困難であったため住民の理解が得られず、そればかりか首長が市民から「交付金目当てだろう!」と批判されるなど、「受入れを表明する自治体の説明責任・負担が重くなっている状況である(経産省)」といった状況でした。そこで経産省は、地域の地質環境の特性(不安定な地層ではないか、など)を科学的に調査して根拠を示し、該当地域を色分けしたマップを示し、地域の理解を得ようとしていました。

その後、委員会やパブリックコメントから「科学的有望地というネーミングは、すでに候補地とされてしまっている様に受け取られてしまいかねない」というコメントがあったことを理由に、2016年に「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」地域という、超長い説明に代わり、マップの名称も「科学的特性マップ」に代わりました。

これまでの経緯についてはこちらから

 経産省:高レベル放射性廃棄物処分について

 原子力資料情報室:科学的有望地の顛末

核ごみプロセスをフェアに!

商業用原発が稼働してから60年の間に、約18,000トンの”使用済み核燃料”が排出されました。これまでの処分場誘致のプロセスは決して民主的なものとは言い難い結果です。そんな中、経産省は、2017年度中に高レベル放射性廃棄物の処分地に適した地域をマッピングして、公表する予定です。そこでA SEED JAPANでは、「公正なプロセス」とは何かを探るため、草の根のプロジェクトを立ち上げました。

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